ツバメ全滅
工房の蛍光灯の笠の上で子育てを始めた今年のツバメは、4~5日前からヒナの声が聞こえ始め、
そろそろヒナが巣から落ちた際のセフティーネットを設置しようかと考えていた。
去年は急ごしらえのセフティーネットに何度かヒナが落ち、その都度巣に戻したので全部が巣立ちした。
煩わしいとも思うが、小さな生き物や植物に関わる機会が増えてきたのは老いに入った兆候と思っている。
ところが、今朝工房に行くとヒナのフン受け用のタライにヒナが5匹落ちていて、うち4匹は既に死んでいた。
昨日の夕方は何もなかったからおそらく夜のうちに何かが起きたのだろう。
生きている1匹をすぐ巣の中に戻したが、親鳥がその後一度巣に来ただけでその後は姿が見えない。
残ったヒナも親鳥が飼育を諦めたようで、早晩死んでしまうから今年のヒナは全滅だ。
こうした現象はネットで調べるとよくある現象のようで、色々の原因が載っていた。
曰く、親鳥の飼育放棄だとか、他のツバメの攻撃(ほかのツバメの巣のヒナを全部落とす)、他の鳥の巣への攻撃などだが、
今更原因を知ったところでどうしようもない。
今年のツバメは巣立ちしなかったという事実を受け止めるしかない。
自然界の現象は時に人間には悲劇的に映るが、感傷的に捉えてもどうしようもないだろう。
動物それぞれに生きる方法や掟がある。
生き残った一匹を巣に戻す際、巣を間近で見たが、子供の頃の記憶と比べるとどう見ても粗末な狭い巣で、
これではヒナが成長しても落ちるのが当たり前だとも思ったが、ツバメはツバメなり計算して作った大きさなのだろう。
ひとは自分の立ち位置からしかものを見ることが出来ないから、感傷的に見るのも私だけかもしれない。
つい最近、藤沢周平の『玄鳥』という、ツバメを巡って心の通い合わない夫との生活を耐える武家の妻を描いた小説を再読したばかりだったので、
ことさら今年のツバメに思い入れがあったのだが、そんなことも重なり残念な思いがある。
4/11日から始まったツバメへの肩入れはひと月半で終わった。
来年の春、工房の中でまたツバメの姿を見ることが出来るだろうか。
↓舟徳利型花入
ブーゲンビリアの枝を切り取り、水漏れ検査の際投げ入れておいたら根が出てきたので、
4月に鉢に移したら元気に育っている。
些細なことに小さな満足が生まれる歳になった。