web悠果堂美術館通信(71)
開館1周年に寄せて
10月4日は静岡陶芸美術館の開館一周年になります。
よくある感想で赤面しますが、あっという間の一年でした。
少しずつ美術館が認知され、やきもの好きな方の来館が増え始めた途端、新型コロナウィルスの脅威に見舞われ、
他県からの団体客や陶芸愛好家サークルの方々などの来館がキャンセルになりました。
陶芸サークルの方からは、美術館の所蔵品の中で実際に手にとってみたい作品などのリクエストもいただき、
同じアマチュアとして楽しい会話ができるかと楽しみにしていましたが、残念な結果になってしまいました。
また、コロナピーク時には断腸の思いで一ヶ月以上の休館も行い、苦しい時期を過ごしましたが、やきもの好きな方々に日本のやきものの<いま>を展示するという思いだけでコロナ禍を凌いで参りました。
コロナ禍はいまもって続いていますが、どのような状況になっても、世界の頂点にある日本のやきものの<いま>を展示するという思いは職員一同まったく揺るぎありません。
各位のご支援ご鞭撻を切にお願いする次第です。
おかげさまで、ご来館いただいたお客様からは、日本の陶芸の<いま>がよく展示されているとか、館内の雰囲気がとても落ち着いている、ゆったりした時間が流れているなど
身に余る評価を頂いており、こうした言葉が職員一同の頑張りの源泉になっております。
また、陶芸作家の方々から小さな美術館には分不相応な優品をご寄贈いただき、これまた職員一同の大きな喜びと励みになっております。ご寄贈いただいた作家各位にはこの場で改めて御礼申し上げます。
変化のスピードが早く激しい現代にあって、日本人のやきものに対する美意識や愛情、親和性などが大きく変化し続けているという感覚を美術館開館以来ずっと感じています。
身近な生活の器から長い時間と多くの先人の苦闘を経て昇華された日本のやきものの美が、日本人の美意識の対象からだんだんに遠のいていくような不安がありますが、私達の小さな営みが陶芸作家諸兄とやきもの愛好家諸氏へのエールになればと願っております。
令和2年10月4日
静岡陶芸美術館 館長 植松弘行
↓アメ釉花入れ
性格が雑なせいか、この作品もあまり丁寧な作りではないが、
最近はもう少しいいものが作れるようになってきた。
ようやくこの釉薬のクセを掴み始めたので、もうじきもっといいものができると思っている。