web悠果堂美術館通信(38)
昨日(11/1)22点の作品をアップしました。
是非とも御高覧下さい。
新規作家として、九谷焼の武腰潤、丹波焼の市野雅彦のほか赤津焼の加藤伸也、加藤道博の作品がございます。
便宜上、九谷焼とか丹波焼という表現を用いますが、物流の発達した現代では窯業地の個性的な土の移動も簡単で、
そうした区分もあまり意味がなく、ただ制作の拠点が窯業地にあり、
かつ作家の傾向やマチエールがそこにあるというくらいの意味しか持たないかもしれません。
やきものを学んでいると、数々の名言に出会うことがあります。
その中のひとつに、「笠間焼の特徴は特徴のないところが特徴」という至言に出会ったことがありますが、
この言葉は笠間焼の現代における特色をうまく捉えた言葉といえます。
笠間に限らず、様々の個性が伝統的制約から離れて自由に作陶をしている姿は、伝統的な窯業地でもよく見られますが、
こうした時代の流れが日本のやきものにどのような成果を生み出すのか、期待をするものです。
また今回は人間国宝のなかでも私の好きな清水卯一の大作3点をはじめ、藤原啓の代表作、山田常山の逸品をアップし、
肥沼美智雄、村田陶苑、村田亀水、小山富士夫、中島正雄の作品も複数もございます。
それにつけても各作家の逸品作品を見ていると、表現者の個性というものがよく判ります。
例えば藤原啓の作品には、おおらかな人間性が醸し出されているとよく言われますが、
今回アップした啓作品はまさに作家のおおらかさ(文人気質とよく称される)がよく判るラインを持っていると思います。
細口の首とゆったりした丸い胴部が絶妙のバランスだと思いますが如何でしょう。
また清水卯一の「白釉 花瓶」は、小品ながら個性がよく出た「逆さたまご」形で、
師である石黒宗麿ゆずりのラインが非常に美しい作品です。
余談になりますが、私もこの形の壺が好きで何度も作るのですが、肩のおおらかなラインと腰から下の締りあるラインががなかなか出来ず、
簡単なようで実は非常に難しい形です。
私などが作るとどうしてもぎすぎすした形になってしまい、何時も情けない思いに駆られます。
性格が変に几帳面でぎすぎすしているからそれが形に出てしまうのかもしれません。
↓鉄赤花入
不知火の土と鉄赤の釉薬はとてもよく合うと思うが、
九州から送ってもらったこの土も底をつきそうだ。