web悠果堂美術館通信(31)
本日(5/25)新規作品23点をアップしました。
今回のアップで最大の目玉は、「陶聖」・板谷波山の「氷華磁草花彫文花瓶」です。
板谷波山は近代日本陶芸の頂点に位置し、その芸術性と品格は他に追随する者がないと言われる作家で、
アップした作品は、「波山の前に波山なく、波山の後に波山なし」と謳われる巨匠の成熟期の名品です。
共箱には本人がしつらえた花台があることから見ても作者の自信作と考えます。
おそらく、波山作品に近いものを作り出すことは、相当の努力を重ねれば可能かもしれません。
(それとて通常の努力ではその麓に近づくことすら不可能と思われますが・・・)
なかには波山の代名詞ともいうべき「葆光彩磁」の復元をめざして努力を重ね、それなりの作品を生み出している作家もいます。
彼らの「葆光彩磁」作品も技術的には非常にレベルの高い作品ですが、なにより波山作品が内包する<凛とした気品>を作品に込めることが非常に困難な故に、
波山を超える作品はこれからも出現しないだろうと私は考えています。
私が初めて波山の作品に振れたのは、1995年の東京国立近代美術館で開催された「珠玉の陶芸 板谷波山展」でしたが、
その時目にした波山作品の芸術性の高さと品のある佇まいは、今も鮮明に記憶しております。
波山作品はいままで私が目にした他の作家の作品と比べ、まったく別格のものという思いはその後も波山作品を見るたびに強くなっていきます。
今回公開した作品は高さ24.3cmと波山の壺の中でも中位のものですが、
その作品が持つ<凛とした気品>は大作に勝るとも劣らないものだと確信しています。
オーソドックスな形で一見すると現代的でないように錯覚もしますが、その端正な佇まいは永遠の美を持ったフォルムだと思います。
どうぞご高覧下さい。
その他、人間国宝の加藤孝造の志野花入、伊勢崎淳の黒備前、加藤卓男の三彩のほか、小野珀子の釉裏金彩花入、13代中里太郎衛門の「叩き唐津赤絵魚文壺」、三輪龍作(12代三輪休雪),滝口和男、浦上善次、肥沼美智雄「兜」など一見の価値ある大作をアップしました。
また、新規作家として備前焼の人気作家・隠崎隆一や高取焼の鬼丸碧山、鈴木五郎などを加えました。
定番の村田亀水、鈴木三成(大鉢),若尾利貞(大皿)作品もございますのでごゆっくりご覧ください。
↓ 鉄赤釉の一輪挿し
波山を語った後でこの作品では・・・。
当たり前だが、同じ人間が作るとフォルムが同じようになる。
右の作品は長めの鶴首に挽いたが、粗忽者の常で生の時に首を欠いてしまった。
薬を2度掛けした分少し渋くなったようだ。