「カジノ法案」

お知らせ

「統合型リゾート整備促進法案」、いわゆる「カジノ法」が成立するようだ。

マスコミによれば、委員会の審議時間が6時間ほどであわてて採決されたとか、ギャンブル依存症に対する対策が置き去りにされているとか、

総じて批判的な論調が目立つ。

法案推進者は、カジノの「経済効果」を前面に出して法案の有効性や正当性を主張するが、直近の世論調査によれば国民の57%が反対だそうだ。

この数字を日本人の良識の発露とみるのは私だけだろうか。

 

 

法案の名称にある「リゾート」という言葉を聞いた時、平成初めのバブル時代にも「リゾート法云々」という似たような名称の法案があり、

全国各地に「リゾート」の掛け声のもと、大規模な大型施設が建設され、「充実した余暇を」と日本中がリゾートに躍った時期があったことを思い出した。

全国のスキー場に数十階建てのリゾートマンションを立てたり、海辺に大掛かりなホテルやコンドミニアムやプールを作り、

私達が、雑誌や映像でしか見たことがない海外の高級リゾートのような施設が身近に出現したが、

バブル崩壊と共にこれらの施設や投資は一挙に不良資産となり、安く買いたたかれたり今もってゴーストタウンと化した姿を晒している。

 

 

日本人は忘れやすい民族と言われるが、今回の「カジノ法案」を見ると、20数年前の失敗をまた繰り返そうとしているように見える。

だいたい政治家や御用学者、官僚たちが口をそろえて言う「経済効果」が、言うほど効果を発揮した政策事例にお目に掛かったことは無い。

もちろん一部の企業や階層にはオリンピックもカジノも甘い蜜の味がするだろうが、一般市民には無縁のものだ。

カジノを中心としたリゾート施設を作っても経済効果は一過性で、諸外国の例を見ても「カジノ景気」はいま右肩下がりになっている。

もともと博打で儲かるのは「胴元」だけだし、カジノのように富裕層には格好のつくギャンブルも、我々市民にとっては身近な娯楽とも言えないだろう。

望むのは富める者に更なる富を上乗せするような「一過性」のカンフル剤的経済政策でなく、

市民生活に密着した経済政策を願うのだが、そうした政策を打ち出す政治の力が衰弱している。

 

 

外国人旅行者が右肩上がりに増えている昨今の日本に、カジノを作ればさらに旅行者が増え税収も増えるという馬鹿な政治家がいるが、

つい最近まで中国人の爆買いで中国人向けに店内を改装したデパートが、一過性の爆買い現象を過剰に評価し、

その投資結果が赤字決算になったり利益の激減になっているのは、インバウンド消費という一時のミニバブルに乗ったからだろう。

「一過性」の経済政策の怖さは、その政策が力を失ってくると負の遺産が投資以上に大きくなることだ。

お祭りは毎日開催すれば集客力もなくなるし、魅力も失せる。

いま必要な経済政策は、カジノのような一過性の経済対策ではなく、成長の速度が遅くても持続性のある政策だと思うのだが。

 

 

日本の魅力が広く海外に伝わり、日本の観光地を訪れる外国人が急増している。

先日京都の紅葉の名所のひとつ東福寺の映像を見たが、外国人旅行者で溢れ、入場制限された状態は紅葉を愛でるさまではなかった。

ここ1~2年京都にも御無沙汰しているが、久しぶりに見た京都の光景は私が知っている京都ではなかった。

祇園なども歩行者天国のようで、押し寄せる旅行者の波が京都市民の日常生活にも支障をきたしているとのレポートだったが、

外国人旅行者が増えて日本人旅行者が減るのではないかという心配すら浮かんだ。

少なくとも、右往左往する人ごみの京都には当分行くつもりはない。

 

 

こうした活況や外国人旅行者を増やすという政策自体を否定するつもりはないが、

インバウンド景気に浮かれ(日本人は浮かれ過ぎる民族のようだ)、日本人の中にある控えめな民族性や

京都などに顕著なきめ細やかな対応が徐々になくなり、マニュアル化されたような通り一片の対応にならないよう願うだけだ。

金を儲けるには何かの投資が必要だが、かつて失敗した同じ轍を踏むことはないし、

日本人の貴重な資質を損なう必要もないと思う。

 

 

カジノにはまって数億の借金を作ったハマコーや大王製紙の御曹司の姿も思い出すが、

なにより、外国人旅行者が日本に来て体験したいことはこの国固有の文化や生活習慣だろう。

カジノで遊びたければマカオやラスベガスへどうぞでいいはずだ。

カジノ文化のない日本人が付け焼刃でカジノを始めても、カジノ先進地域に勝てるはずもなかろう。

華々しくオープンするカジノやリゾート施設が数年後にゴーストタウンの姿を晒しても、

この政策に踊った政治家や官僚は知らん顔して傍観するに決まっている。

まったく馬鹿なことだ。

 

 

↓最近の結果

「濡れたような黒」と「乾いた茶色」を目指して何度か焼成したが、

どちらも想いとかけ離れた結果になった。

精進が足りないのだろう。

まったく情けないがこれがいまの実力だ。

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