<罰>は<罪>を抑止できるか? その6 (謝罪について②)
戦後70年になる。
戦争を身を以って体験しかつ記憶に留めている世代は、おおよそ80歳以上になるから人口からすれば1割位だろうか。
戦争に直接的、間接的に関与した世代は我々より前の世代で、「歴史」としての戦争は知っていても、
戦争に加担することがなかった我々や次の世代が、依然として「戦争責任」を問われ続けることに釈然としない思いが残るが、
当然、日本人として戦争に対して責任や呵責が無い訳ではない。
個人的には、戦争を起こした世代は存命者も少なくほとんどが戦後世代だから、中国、韓国と新しい関係にシフトできないかと思う。
自分たちが起こした戦争ではないのだから、声高に「戦争責任」を問われても「責任」にどう向き合ったらいいのかうまく判断がつかない。
国家が犯した戦争という<罪>は「歴史」というスケールにおいて、どの程度の時間その<罰>を問われ続けるのであろう。
被害者は加害者ほど被害を忘れることはなく、被害の記憶は「教育」を通じて次世代に引き継がれるから、
日本は想像以上に長く「戦争責任」という<罰>を問われ続けるかもしれない。
一方、アメリカによる原爆投下や東京大空襲をはじめ地方都市への空襲(沼津大空襲も含む)による一般市民の大量虐殺、
ロシアによる不可侵条約の一方的破棄と日本人のシベリア抑留と強制労働、北方4島の占領などは、
「無条件降伏」によりその被害や補償、謝罪などをアメリカやロシアなどに求めることが出来ない。
戦争を起こしその戦争に負けるということは、勝者の行為はすべて正当化され、敗者がすべての<罪>を負うということだ。
「勝てば官軍」とはよく言ったもので、明治維新を持ち出すまでもなく、勝者の<罪>はすべて歴史の闇に葬られる。
終戦50年以降、10年ごとの節目に総理大臣談話が発表されるが、今年の発表を前に内外ともにその内容(文言)が注目されている。
安倍首相としては「侵略」や「痛切な反省」を文言から外したいようだが、どのような談話になるか注目していると共に、
日本が戦時中に占領していた中国や韓国の反応も気になる。
発表前から中韓から色々な牽制があるが、どうも日本は若しくは日本人は「謝罪」が上手くないようで、
70年たった今も「謝罪」が足りないと二国から批判を受けている。
戦争加害国として、70年間の「謝罪」や「賠償」が不足しているから中韓が機会あるごとに批判を繰り返すのか、
それとも被害国としての立場を「優位性」として利用し、政治的優位や賠償を確保しようと叫ぶのか分からない。
中国や韓国と国交正常化した際、きちんと「けじめ」を付けなかった分だけ、これからも<罪>を問われ続けるのかもしれない。
「謝罪」と「賠償」が足りないのか、それとも被害者の立場を利用して過剰な要求を企てているのか、
中韓との「賠償交渉」の歴史的な経緯や内実を詳細には知らないから、私には判断が出来ない。
しかし卑近な例ながら、業務上で何度かこうした立場に立たされる私としては、身につまされる思いがする。
過日、村上春樹が共同通信のインタビューで日本の「歴史問題」について、
『相手国が『すっきりしたわけじゃないけれど、それだけ謝ってくれたから、わかりました。もういいでしょう』というまで謝るしかない」と語った。
これに対し、百田尚樹が「小説家なら、相手が『もういい』という人間かどうか、みぬけそうなものだが・・」と批判した。
この二人の作家の「歴史問題」に対する立ち位置は、そのまま今の私たち日本人の中韓に対する「謝罪」の思いを代表している。
もし私たちの「謝罪」が不足しているのであればしっかり償いをしたいという思いと、
しかし中韓はどこまで償いを求める気だろうか、という気持ちを二人は代弁している。
ただ、百田尚樹の物言いは「もういい」と言わない相手に対し、ではどうするのか?
謝罪は十分したと実証し、不足を言う中韓とこれからも対峙するのか、
若しくは今後何十年でも彼らの言うに任せるのか、という具体性が欠如した感情的な批判に過ぎない。
一見「コワモテ」のこの男もその先は語らない。
日本が中韓と戦争賠償の交渉に入った時期は、日本が目覚ましい勢いで戦後復興をなし景気が右肩上がりに上昇していた時期だった。
他方、中韓はまだ国内が安定せず、総じて国力や国際的な発言力が低かった。
経験的に言えば、こうした立場の強弱も当時の交渉結果に影響したと思う。
立場の弱いものが強いものに遠慮するという見方は、国家間交渉ではあり得ないのだろうか?
日本が世界第二位の経済国から転落し、中国や韓国が国内の安定と共に経済力、発言力が増している現在、
彼らが不満と考える過去への謝罪を、今政治的に利用しようと考えているのだろうか。
交渉の過程ではよくある話といえばよくある話だが・・。
戦争終結の日までに生まれた人が、それぞれの国ですべて亡くなる日を以って賠償請求や批判は時効とし、
以後一切の賠償や請求は自動的に国際司法裁判所が判定するくらいにしないと、
何時まで経っても中国、韓国との溝は埋まらない。
(焼き締め花生)