一楽、二萩、三唐津
「罰は罪を抑止できるか」というテーマで私が考えていることを少し書き連ねた。
私の能力に余るテーマだったので、なかなか進まず、その割には疲れた。
まだこのテーマで考えていることを書きたいが、しばし頭を休めるため好きなやきもの談義でも。
「茶道」若しくは「茶陶」の世界では,「一楽、二萩、三唐津」という言葉をよく聞く。
茶道における抹茶茶碗の「格」の序列を示したものかと思うが、初めてこの言葉に接した時、
「なんだ、焼きの甘い順番じゃないか」と思った。
この考えには今も変わりがない。
この順序は、一般的には焼き上がりの温度が低い順に並べられており、三つとも基本的には酸化焼成であるから、
当然焼き締りも甘い順になる。
焼きが甘いからやきものとして劣るというつもりはないし、
やきものの評価の中に、特に茶碗においては柔らかさは重要視される要素だから、
この格付けの順番は茶人好みの柔らかい雰囲気の順と言い換えてもいい。
例えば、楽茶碗は長く使っていると茶だまりに茶筅ずれ(竹にこすられた傷)が出来るというし、
萩焼の「萩の七化け」と言われる現象も焼きが甘くて茶渋や湯が染み込んだ結果の変化を言う。
唐津焼については、知人から中里太郎衛門の作品を頂いた際、中に「お茶が漏れることがありますが、唐津焼の特徴です。使っていく間に
茶渋が染み込み漏れが止まります」というようなしおりがあり、驚いたことがあった。
その茶碗を説明せず父にあげたところ「この茶碗はお茶が漏る」と不評だったが、長年使っていたら漏れが止まった。
楽、萩、唐津などの茶碗は、焼きが甘い分、その後の使用で様々な表面変化を起こすさまを気長にたのしめという事かと思う。
まったく昔の日本人の美意識には恐れ入る。
個人的には高い温度で「キンキン」に焼しめた器が好きで、備前や伊賀、信楽が好みだが、
備前焼は低温で長時間焼成するのがスタンダード(一般的には10日~2週間以上のようだ。長い場合は数か月も焼き続ける)で、
高火度焼成とも言えない側面があるが、
昔から『備前のすり鉢投げても割れぬ』と言われたほど、良く締まったやきものだ。
私のやきものは出来るだけ高温で、それも限界ギリギリまで温度を上げようとするので、
よく釉薬が垂れてしまったりすることがあるが、どうも極限温度に近いほど発色が美しいように感じるので、
その分失敗が多い。
とてもじゃあないが、こんな焼き方は趣味ではできるが、生活を支える仕事としては成り立たない。
(焼き締め瓶)